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宵の市行燈

収納できること

 行燈製作にあたって商店街側からの要望に、各店が自分の店で収納保管しておける物(大きさ的な制限)という事がありました。月1回しか出番の無い行燈は、普段各店内の何処かに収納保管しておかなければならない。邪魔になる大きさでは意味がありません。
 蔵の会デザイン部会で絞り込まれたA4サイズパネルの三角柱行燈は、その意味でパネル状の物が9枚重ねて仕舞えるという利点がありました。しかし、この時点では、丸環にフックで一枚づつ組み立てたり、吊り下げるという程度の考えで、いざサンプル模型を作って試すと意外と丸環とフックの連結が面倒臭くパネル間の隙間から内部の光源や線が見えあまり見栄えのいいものでは無かった。
正直、組み立てる手間が問題と認識する事に成る。
宵の市行燈

折たためること

 設置・収納時の手間をなんとか簡単にワンタッチとまで行かなくてもできないか?この問題を解決するヒントを、たまたま立ち寄ったMoMA Storeで発見する事となる。Cube robotという玩具である。木製のキューブをゴム紐で接続してあり好きな形に色々と変形ができる。9枚のパネルを同じ様にゴム紐などで接続し畳めたり拡げたりする事が出来るのではないかと....。
A4の紙を縦横に2本ずつ折目を入れて9枚に分割してどうしたら折たためるか?思考錯誤を繰り返す。切目もあちこちに入れたりして...。
何となく、たためる事が解ったが、試しているPPCの紙と実際に使う木のパネルでは厚みが全然違う。この厚みは、折る方向が反転すると丁番部分に問題が発生する。ゴム紐は、この点非常に優秀で良いのだが...、ゴム紐の通り道が常に長方形の辺部分に出てくる事が気になりだす。これもデザインに取り込めば良いのだが、主張しているように感じゴム紐案は次第に思考から消えていく事となる。
A4のPPC用紙

組立ること

 A4サイズの裏紙を切り刻み作業を繰り返していると、ゴム紐が単純な丁番でも良い事が解ってくる。60度開く部分と300度開く部分の2種類である。クリアファイルなどのポリプロピレンであれば、60度ぐらいの丁番は代用できるだろうと思い模型を作ってみる。不要となったクリアファイルにカッターで半分切り込みを入れて簡易丁番とする。意外と良い。問題は、300度開きだが、木フレームの厚み分があるので、回転の軸を2箇所にすれば良い事がはんめいする。1箇所は、120度の回転軸で他方180度軸の2軸にし厚みの問題は解決した。
次に三角柱となった時の最後の留め方だが、ホームセンターをあっちこっち歩いて見付けたのがマグネットシートである。簡単に吸い付き、切り離しができるこれ以上無い発見!(笑)このマグネットシートは、上記の2軸丁番部分にも仕込まれ三角柱が構成された時に2軸丁番部分の固定にも活躍する様になったのである。
1/3試し模型

吊るすこと

 3枚のパネルで三角柱を構成する事が出来た。これを3段積めば良いのだが、各段との接続方法と収納の仕方である。各段は3枚重ねた状態に簡単にする事は出来たが、最終的に全体を仕舞うのに、各段づつ折たたむのもイマイチ芸が無いな〜(笑)
 各段畳むと3枚のパネルで厚みはさらに厚くなっている処をさらに畳もうとしてる訳ですので、ポリプロピレンの丁番等では対応しきれない。ここで活きてくるのがゴム紐案である。3段を束ねるの紐(ゴムである必要は無い→自重でOK)を上段から中段、下段ととおしておけば3枚1セットのブロックを紐が丁番となり折たたむ事が出来る。広げる時は、端部の紐を通せば、各段の自重で丁番部分の拡がった紐も自然と閉まる訳です。畳むときは、順番に畳んでいけば紐は穴を通して伸びてくる。
 これで折たたみ式行燈が作れる事となる。
※丁番はポリプロピレンは採用されず、障子部分と同じワーロンのタフトップを貼っただけで特に加工もせずに丁番の役目を十二分に発揮している。

普段、この行燈を観る時に、「折たためる事」自体は、観る者にとっては全然意味を持たないし、見た目にはその事自体も理解できないと思われる。
しかし、その裏にある設置収納の手間を如何にシンプルにするかという現実的な問題を考える事は、建物の設計でも同じですね。

最上部を両手で開く

上・中・下段が連なって開く 右側縦3段の列を後ろに折たたんでいく 300度回転させる。左側は、そのまま閉じる。 縦に3枚折たたまれた 下段の3枚のパネルを一緒に手前に持ちあげる。
180度持ち上げ中段と揃える。 中段と下段を今度は反対側に折上げる 下段と中段を一緒に折始める 下段・中段ともに折上げる 折たたみ完了(横から)

折たたみ完了!