architecture

昭和初期 川越に洋風の風は確実に吹いていた

川越の大工による洋風五軒長屋

  重要伝統的建物群保存地区の南寄りに位置する当建物は、昭和5年築の洋風五軒長屋である。川越には、建築家(保岡勝也など)による洋館、大工の手による擬洋風建築などが数多く残っています。長い年月の中増改築を繰り返されてきた一軒を、オリジナルの残る柱・梁を頼りに復原します。
昭和初期の大工の手による洋風町屋として評価され伝統的建造物として指定を受け平成25〜26年に復原工事を行っています。
外壁は、人造石洗い出し仕上げ、掻き落とし仕上げ、ドイツ壁とモルタル系の左官仕上げのオンパレードです。
明治30年代の写真 写真右は「万文」(現在の蔵造り資料館)
2012年の写真
  一番街の通りに面する当建物は、ファサードを大きく改造されていました。
お隣の2軒は開口部が木製サッシからアルミサッシになり、1階部分にも手が加えられています。その奥の2軒は比較的オリジナルに近い状態を保ちつつも昭和5年からの80数年を経ての状態でありました。
復原イメージパース
路地全体のファサード
2013年復原イメージ図

●平成26年度かわごえ都市景観表彰「都市景観デザイン賞」受賞


---------------------------- 審査講評 -----------------------------
アールデコ鍛冶小町堂です。
こちらも昭和初期に建てられた建築の復原で「昭和のにぎわい再び」と名付けました。
この建物は蔵造りの町並みの中程よりやや南に建つ五軒長屋の地区です。 高度経済成長期に大きく改造された外観を、古い写真の片隅に僅かに写る往時の姿や柱や梁に残る傷跡を丹念に調べ上げ、また今も残る同時代の建物を参考にしながら細部の装飾まで根気強く丁重に再現されています。クリーム色の外壁を基調とし深い緑色のパラペットやペパーミントの窓枠、曲線を多用したデザインは、当時世界中で流行っていたアールデコの影響だといえると思います。昭和初期の川越商人の活気あふれるキンシュセイが現れています。この復原事業が誘発したのか五軒長屋の別棟の修理も進んでいます。ほどなく、鍛冶町横丁は昭和初期の景観が蘇りかつてのにぎわいを取り戻す事になると思います。