architecture
屋 根

木組がひと段落しても屋根工事も大変である。多角形という形、これにこだわったわけだが、その効果は、どの程度出るのか。
多角形にすることによる弊害?は、あちらこちらに出てきたと思う。反面、良いこと?も少しは、あったのでは無いかと思っている。

さて、なぜ多角形にしたのか?ボールトは、曲面である。曲面を木で作りたいという希望を元に始めた中で、そう大きくないスパンで
曲面を作るのだから集成材のアーチを並べてそこに面材を張っていけば、済むことである。しかし、あくまでも無垢材にこだわりたかった。
クライアントも接着剤は信用できないという話もあった。さてそこで、無垢の木を使うには、直線としての材料で考えることになる。
集成材のアーチは、点・線・面・立体の考えで行けば、アーチは、線(曲線)(同一平面内に納まるという意味)である。
その面を平行移動して間を繋いでいくという考えであれば、石井和紘氏設計の清和物産館のような形が基本である。又、平面を構成していくには、
同じく清和文楽館の客席棟の構造(ラメラ格子)がある。
ボールトは、曲面である。曲面=面は、線の積層で作る事ができる。一般にこの積層は、平行移動を意味するのだが、違う線の使い方、
網に近い考え方に成る。この網も網の方向が法線と平行と直交で網掛けするのであれば、線の積層を繋いだ形と同じである。
今回は、この網を法線方向から45度回転させた網掛けが一番近いと思われる。しかし、完全な網ではなく、ぶちぶち切れている網である。
よって、パーツごとに製作して後で、ドッキングという技は、できない。端から順番に順序良く編んで行かなければ成らない。
曲面を45度振ることにどんな意味があるか?これは、すごい発見(私だけ?)であった。たとえば、同じ曲率の曲面を45度振った網と振らない網
を想像してみてください。網目のピッチが同じであれば、網を構成している線の曲率は、45度振ったときに全て同じになる最大の曲率が得られるのである。
30度いや15度振った方がもっともっと大きい曲率が得られるよと考えがちだが、それでは、全ての曲率が一つにならないのである。
ポイントは、全て同じということ。又、無垢の木造では、鉄骨やRCのような同一平面で接合していくことは、困難であるという事が逆に幸いしている。
曲線を簡略化していくと線の集合になる。しかしその線と線の交点のなす角度は、角度が小さくなればなるほど、材と材を絡ませるにには、梁のせいが必要になる。
逆に角度が大きくなれば、梁せいは小さくなるが、からみの部分が大きくなり、梁の断面欠損が大きくなる。このバランスの検討には、相当な時間を費やしている。
話が、少しそれてきたが、丸(円)は、もともとは、3角形である。角を1つ落として4角形もうひとつ落として5角形.......。これを限りなく行うことで円に近づいていく。
円周率を求めるみたいに.....。よって、試行錯誤の上、正24角形という形が導き出されたのである。この正24角形の頂点を1つ飛ばしに繋いでいくと
木組み網代ボールトが完成する。その基本として使った多角形をデザイン上残したかったというのが、理由である。又、曲率が比較的きついので、
天井のボードや野地板敏としての構造用合板などを曲げて施工するよりは、規制のサイズ3×6板を3等分して利用できる方向の方が、
コスト・施工面でも有利と思ったからである。実際は、どちらが正解であったかは、不明だが、どちらでやっても大変だったという事実は変わらないであろう。

ボルト穴に埋木をし終わって梁の雰囲気が少し変わった。
埋木は、梁材と同じ米松であるが、梁の繊維方向と同じように入れてもらいたかった。ボルト穴を消し去りたい。
しかし、実際には、繊維方向と直交する様に埋め木は行われている。
見積もり段階で無節の米松で話をしていたが、1等材で節ありで調整が付き施工されている。
実際は、節はあった方が、デザイン上よかったと思う。
自然素材である木を工業製品のようなmm単位の精度を求める設計で、無節で行っていたらホント味気ない物となっていたかもしれない。
さらに、埋め木の話で、このボルト穴の径がちょうど、他の節のサイズと近くうまくなじんでいてわかりずらく成っていると思う。
上の写真で、節とボルト穴の埋め木部分がわかりますか?意識すれば、わかりますけどね。
色々な部分で、うまく転ぶ部分もあれば、うまくいかない事もある。 内部、良い感じです。 軒先部分 屋根のアスファルトルーフィングが張り終わり、スカート部分の銅板が葺かれているところです。 スカート部分は、勾配が緩いので、縦ハゼ葺きである。銅板の厚みは0.5mm
頂上乗っているものは、ボールト部分用の銅板である。ボールト部分は、一文字葺きである。
銅板の厚みは、0.5mmである。 天井の下地強化石膏ボード12.5mmが貼り終わった段階。 ..... 2階リビングから和室方向を見ている写真になる。
天井の木の梁には、デザイン的要素と、隠れた対策が隠されている。
2階部分は、地域上というか、商業地区特有というか、敷地一杯に隣の建物が建っている。よって太陽の光は一日中ほとんど入ってこない。
クライアントも長年そのような場所で生活してきているためと、商売柄、昼間太陽が2階のリビングに必要さを感じないという。
むしろ、個室(3階)に太陽の光が欲しいというようであった。
しかし、代が変わったり、生活スタイルが変わってリビング中心の生活になることは、十分考えられるために、リビング上部は、木で床を作る事
にしている。将来、部屋数もそんなに必要なく、開放的で、太陽の光を入れられる高ーい天井(木の梁が見れる。天井高さ7.6m)を実現できるようにである。 111本の梁の中には、刻みの時期がすごい梅雨時に辺り黒カビが目立つものがある。
カビ取りを行ったが、完全に取れ切れていない。このカビをどう処理して行くかが課題である。
足場が取れるのが楽しみですね。天井の色は、白である。黒か白かどちらかで迷ったが、黒であれば、木の梁がぐっと引き立って夜には、
外と一体になり天井が無くなり、屋外で、木の梁に囲まれた空間になる。しかし洗濯したのは、白である。
白は、木の梁と色が近く、迫力は、薄れる。しかし、開放感は白の方がある。
最大の理由は、空中を無数に行き交う梁の上にたまるであろうホコリである。
黒の天井では、梁のエッジ部分にたまったホコリが下から見上げた時に目立つからである。
このような設計を提示した時、当然クライアントからホコリの問題は、指摘されていた。ホコリがたまらないように各梁の上面が隠れるように天井を
貼れば、何にも問題は、無いのであるが、基本的にそれを張ることは、相当困難な工事になる。
写真を見てもらえば、わかるように梁の上に別の梁が乗りかかっているで、全ての梁の上面が隠れる面を設定して張ったら、木の梁は、ほとんど
見えなくなってしまう。それなら、やらない方が良いよ。
色々な話をクライアントと交わした。ホコリ、ごみ溜りになる部分。照明器具も基本的にセードが付くものは、選んでいない。虫の死骸がたまって汚くなる。
この部分以外は、ホコリがいかにたまらない納まりができるかを色々な部分で行っている。
そのひとつが、たまっても目立たせない方法である。


足場をはずさないと3階が作れないので、天井面の仕上げ(塗装)を行う。梁に塗装が付いたら大変なので、養生している。
この養生もすごく大変な作業である。111本の梁一本一本を巻いて行かないと駄目だから....。
このボールト屋根は、正多角形である。しかし、各辺の長さが同じであるが、よく見ると頂点ラインの部分が継ぎ目にならない部分が出てきている。
これは、下から同じサイズ(既製品のサイズ)の物を張っていくので、上に行くほどずれが大きくなってきて目立ってくる。
時間が全てを解決する訳だが、せっかくの多角形が単なる円形に見えてきてしまう事がすごく残念なことだ、実際下からは、ほとんど見えないのだが....。
多角形を作るために大工さんなどすごく苦労していただいたものが申し訳なく感じる。 銅板屋根のアップ写真です。ちょっとなんか魚っぽい生命感を感じます。
工業製品でありながら施工精度がすごく現れる材料であると思う。しかし、その精度が良いとか悪いという話で無く、微妙な各面のうねりが
太陽の光を受け、反射し、移りこむ。この姿は、一瞬で変貌していく。このテカリは竣工時には無い。面白い材料だ。 スカート部分の軒先である。垂木部分を切り欠いてALCが上まで到達させている。
ここは、空気の通り道になる部分である。
天井の塗装中。夜で暗く、フラッシュもたかなかったので、暗い写真なので、画像処理をしているので、画像が荒くて申し訳ありません。
木梁の間を縫って塗装している様子がよくわかると思います。
ボードの継ぎ目のパテ跡も見えますが、現場が始まった当初は、梁をよけて、ボード(天井)が貼れるのか?塗装ができるのか?聞かれた。
当然できます。が、設計図(矩計図や天井伏図などを見てもあくまでも平面に置き換えての図面なので、想像することは、困難である。
私は、3DCG上で、このサイズは、検討した。施工できる(人が入れるが前提程度だけど...)か、狭すぎる=材料が、多すぎてうるさい。

足場が外れた〜。わお、わお〜。
思ったほど、重たい感じがしない。結構軽やかに形作られている感じだと思います。(人によって、感じ方さまざまだけど...) 鉄骨の柱(写真左の白い部分)の耐火被覆(ニュータイカライト)の施工中、梁も被覆して行く。
壁(外壁に面する内壁側も被覆をしていきます。 道路側から敷地奥の方向を見通す。 この写真は、軒先(裏側)の見上げだが、木組み網代ボールトの基本の考えがわかりやすい。
直線の短い材料を円柱の法線から約45度回転させたものを、中心から15°ずつ回転させて行っている。
次の列は、向きが変わるだけ、その次は、元に戻るだけ。
ただ、余談だが、道路側にせよ、裏側にせよ、表に方向性が出るものが出てくるので、向きは気にした。写真で判断できるかわかりませんが、
外部に出てくる木の梁は、どこから見ても必ず右肩上がりになるようにしている。1列ずれると、右肩下がりになってしまう。
サイドの軒先部分である。空気層の入り口が横に一本通っている木の内側に成る。
ここから入った空気がスカート部分を通り、ボールト部分を通り、頂部で排出される。        
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